第三十二話
外堀の中央線~3系統の風景

東京都心には意外に緑があるとの印象を受けるのは、皇居周辺の緑の他に、ひょっとしたら中央線からの外堀の風景がそう思わせるのかもしれない。他にも上野の山やら外苑やら明治神宮やらあちこちに大きな緑の土地はあるのだが、御茶の水から四谷に至る神田川~外堀界隈は、電車に乗っていれば簡単に目に飛び込んでくるその緑と水の光景であることが、東京が大阪や名古屋とは違う「緑のある都市」との印象を自分にもたらしているようにも思えるのである。
実際に他の大都市と比較して多いのかは分からないが、少なくとも目にする所に緑の空間が目に入ってきやすいのは間違いないように思う。中央線に乗っていて楽しく思うのは、飯田橋から四ツ谷までの区間に外堀で開ける都市空間があるからに他ならない。

中央線を御茶の水方面から来て飯田橋を過ぎると右手に広がるのが外堀である。それまで寄り沿った神田川が江戸川橋の方に針路を取ると、代わりに外堀の水の風景が飛び込んでくる。休日の昼間だったりするとボートが出てのんびりとした景色となるが、これも東京らしい景色だなと思う。

江戸城を囲むように、東から北東の一部は数寄屋川と日本橋川と神田川を自然の障壁として生かし、そちらに続く飯田橋~四谷見附~赤坂見附~溜池を経て数寄屋川に至る辺りに人工の堀が築かれた。今の溜池には文字通り大きな池があった所だが、東京の発展によって埋められた。現在では赤坂見附から先の堀や数寄屋川も埋められてしまったが、赤坂見附の弁慶濠と飯田橋から四谷見附に至る寸前にある外濠公園までは水の風景が景色に溶け込んでいる。残念なのは赤坂見附あたりは高速道路が上にかぶさってしまっていて昼でも暗いこと。道路が無い頃は抜けるような風景だったことだろう。

東京の風景は水の上に建築物を覆うことで発展してきたところもあるが、皇居の内堀と同様、都会の中心に水があり空が抜ける風景が東京を東京足らしめているのも間違いない。
晴れた昼間の中央線に乗ってみたならば、この風景が他の街にはない独特な風景であること、つまりはとても魅力的な車窓であることを実感し、更にこの大都市を深く知りたいと思うのだ。

外堀の抜けるような空

外堀の抜けるような空

●3系統 担当:三田車庫
品川駅前~札の辻~赤羽橋~虎ノ門~赤坂見附~四谷見附~市谷見附~飯田橋
市内電車の初期に開設された「外濠線」をルーツとする由緒ある系統でした。虎ノ門から飯田橋までは(旧)外堀沿いに走ります。

Originally, written on October 09, 2010