深川というところは江戸時代から海辺に面した地域で歴史がある。明治時代に東京市が成立した際に東京十五区の一つ、深川区が立てられた。
国鉄〜 JRが長い間通っていなかったこともあり、大規模な商業施設が並ぶ繁華街が無い代わりに、今でも昔からの商店街が広がる下町である。ここに地下鉄が通ったのは昭和40年代であるので、長い間交通の中心は都電が担ってきた。そんな経歴もあってか変に背丈を伸ばした地域ではなく、何処にでもある街の一つとして歩くことが出来る。
中心となる門前仲町は富岡八幡宮の門前に開けた商業街で、この辺りの商業の中心。八幡宮だけでなく深川不動尊もすぐその際にあるので、参拝客と相まって非常に賑やかである。
東京はあちこちから人が集まっているから名物料理に疎いような観を持っていたのだが、少し探せばそれは真っ赤なウソだということが分かる。日本の中心に君臨して人が集まる都市とは言えども400年の歴史があるのだ。地場の料理が無い訳がない。江戸前の寿司は東京湾で取れた魚が有ってこそのものだし、全体的に海系のものが多いが、月島のもんじゃ焼きのように粉物や浅草辺りに並ぶどじょう(つまりは柳川)もある。関西の食べ物として代表的であるお好み焼きも、実は東京が発祥の地らしい。また、個人的には天麩羅やそばも東京の料理として推してみたい。
探せば色々出てくる東京料理にあって、歴史ある「海辺の街」深川で食べられる郷土料理が「深川めし」。東京湾で取れたあさりにサイコロに刻んだ厚揚げと葱を煮込み、その煮汁で炊き込んだゴハンに具をかけて食べる。そのものずばりの「あさり御飯」も食べられるが、深川に来たのであれば深川めしを食べてみたい。起源をたどれば味噌汁のあさりを御飯にかけて食べたものだそうで、いわば漁師めしだ。私は貝が苦手な人間であるけれど、これは美味しくいただけた。門前仲町にはこの「深川めし」を食べさせてくれる店が何軒かある。
東京は世界でも有数の食の宝庫だと言うけれど、お洒落で高いものでなくともこのような東京の料理にはまって見るのも悪くない。しかもこの都市の名物料理とはかしこまったものでは無いので敷居が低い。街歩きの途中にもこのような店に積極的に足を踏み込んでみると、それまで見えて来なかった東京の顔を目に、また舌にすることが出来るだろうと思う。
東京は日本一の大都会であるけれど、歴史ある「町」でもあるのだ。そこで食する郷土料理は決して京都や大阪にも劣るものではない。
これぞ東京の郷土料理!
●38系統 担当:錦糸堀車庫
錦糸堀車庫前~水神森~境川~東陽公園前~門前仲町~永代橋~日本橋
錦糸町からいったん亀戸の方に出て南下し、永代通りを走って隅田川~日本橋に至る路線。下町の南部は地下鉄が通った今もバスが幅を利かせており、この系統もほぼ同じルートを錦糸町から門前仲町までですが、都07系統が頻繁に結んでいます。
Originally, written on October 30, 2010