第九話
四丁目の鐘~4系統の風景

中国杭州に西湖十景と呼ばれる風景がある。その内の一つ「南屏晩鐘」は、西湖近くにある寺の鐘の音を景色の一つとして詠んだものだ。

銀座四丁目の交差点の角に建つ和光と三越の光景は、誰しも一度は目にしたことがあるだろう。ニューヨークであればタイムズスクエアがそうであるように、東京を代表する街角の風景となれば、銀座四丁目交差点を置いて他にない。ひょっとしたら渋谷のハチ公前のスクランブル交差点も東京を表す交差点となるかもしれないが、幅広い年代を通じ全国に知られた東京の風景と言うのであれば、この和光の時計塔の前ということになるのではないだろうか。

単なる銀座の一交差点であれば一丁目から八丁目、西の数寄屋橋、東の三原橋などいくつもあるが、古くから歌や映画の舞台になり、都市の風景として語られてきたのが四丁目交差点。三越、松屋の百貨店から、高級ブランドのブティック、木村屋のパン、鳩居堂の便箋、伊東屋の万年筆、千疋屋の果物など親やその前の世代から続くもの、並木通りやすずらん通りのレストラン、ユニクロやH&M代表されるカジュアルファッションに至るまで、あらゆる店がこの四丁目交差点を起点に並んでいる。
この交差点が他の風景と異なるのは、東京の代表的な風景であると同時に、多くの世代がこの交差点を通じてつながっていることだろう。そこには明治も大正も昭和も平成もある。そしてそのつながりの象徴として描かれることの多いのが、四丁目の角にある和光の石造り。この建物を見れば(写真や映像であっても)どの世代でも銀座を意識するだろうし、古今を通じ東京の景色として思い起こされるものであるのだ。

毎正時、時刻を告げる和光の鐘が交差点に響く。時計塔は鐘が響かないと様にならないが、ここの鐘の音は東京の歩みと共に響く鐘の音だ。音が紡ぐ都市の風景というのがあるとすれば、この時計塔の鐘は間違いなく東京の風景と言えるのではないか。

同僚のF君は、奥さんの為に花束を買い、二人でこの中央通りの銀座界隈を歩いたそうである。このような話も銀座が舞台だと粋に聞こえてくるから不思議なものだ。

歩行者天国の銀座四丁目

歩行者天国の銀座四丁目

●4系統 担当:目黒車庫
五反田駅前~清正公前~魚籃坂下~古川橋~一ノ橋~金杉橋~新橋~銀座四丁目~銀座二丁目
山手から銀座へ走る路線。白金、麻布十番、銀座と、古い住宅街と古くからの繁華街を結んでいました。白金辺りは裏へ入ると、今でも古く趣きのある家が見られます。

Originally, written on May 16, 2010