第十九話
表参道の街角~9系統の風景

東京で華やかなイメージを持つ街角の一つが表参道であることは間違いない。銀座界隈に劣らず世界の有名なブランドが並び、お洒落なブティックが並ぶその風景は、ファッショナブルな都市を表現する街路としてこれほどお似合いな場所も無いだろう。一つ一つの店や建物を探していけばここよりも奥の深い店はあるだろうけど、なんというかアパレルからお菓子に至るまで、街全体が大人の雰囲気を持った華やかなイメージに包まれた場所は、東京の他の地域には見られないように思うのである。

別に服やブランドに興味がある訳ではないけれど、表参道を意味もなく歩くのは好きだ。明治神宮前の若者の街から青山通りに向けて段々と「大人度」と共に街が変わっていく様は、騒々しさから落ち着いた空気へ変わっていく移り目を感じるようで楽しい。

しかしこの街を華やかな敷居の高い街として位置付けるのも違うような気がする。
誰にでも自分の空間というものがあると思う。それは住む地域によって変わるものであろうし、自分の年代や地位によっても変わっていくものだろう。

私は自らを田舎者と認めるけれど、表参道界隈は洗練された地域でありながら街が持つ雰囲気として敷居が高い訳ではなく、無条件に歩きやすいのだ。それはひょっとしたら銀座四丁目を現代風にアレンジしたような感覚かもしれない。この街に騒々しさは無いし、かといって鼻が高い印象もない。ここを歩いてれば間違いないという安心感。適度に雰囲気の良い店があり、入るのに間違いのないレベルのカフェやレストラン。別に格好付ける訳でもなくダサい雰囲気もない極めて自然な街角としてこの街は存在するように思う。

山手線沿線とその内側程色々な顔をごちゃまぜにして持っている都市も少ないと思うが、年代や自分の立ち位置に応じた身の丈を持つ街というのがあるのなら、渋谷や原宿は雰囲気が自分には若過ぎて辛いし、六本木辺りのバブル的な雰囲気もしんどい。あまりにも格好つけた雰囲気もきついが、年代的に年配過ぎたり十代や二十代前半の賑やかな雰囲気とも違う。この街の雰囲気を居心地のよいものと感じることとは、自分自身が若くない、かといって年配だというにはまだ早い年代になったことを認めることかもしれない。

そんなこんなで休日の午後、何が無くともプラプラと街歩きをする場として、表参道にやって来るのだ。

夕暮れの表参道

夕暮れの表参道

●9系統 担当:青山車庫
渋谷駅前~青山一丁目~赤坂見附~三宅坂~桜田門~銀座四丁目~築地~茅場町~水天宮前~浜町中ノ橋
青山と銀座を結びます。路線の中央は官庁街から皇居周辺を、東側は隅田川の近くに至る長大路線で、現代に残っているのであれば、東と西で違った景色が見られそうで是非とも乗ってみたい気にさせる路線です。
昭和38年10月、青山一丁目~三宅坂間廃止のため、青山一丁目(北青山一丁目)~六本木~溜池~虎ノ門~桜田門へ途中経路変更。昭和42年12月、六本木~溜池~虎ノ門間廃止のため、六本木~飯倉一丁目~虎ノ門へ途中経路変更。

Originally, written on July 10, 2010

投稿者:

Mr.Problem

しがない制作屋です。 活動範囲:Web Producer / Director / html全般 / CSS全般 / WordPress / ガンダム / ドラクエなど..。企業内のWeb担当として活動。神奈川の海沿い生まれ。京都、大阪、神戸と流れて、今は東京在住です。