第十一話
二重橋の「衛兵」~25系統の風景

世界的に見て大都会のど真ん中にこれだけの緑が残されているのはとても珍しいことらしい。皇居の周りを巡ってみれば丁度良いランニングコースであり、一日を通して、結構夜も遅くまでランニングをしている人を見かける。

皇居前広場。
明治維新後、この広場にあった武家屋敷は全て取り壊され、陸軍の演習場などに使われたが、政府が金に困ったとかで、その東側一体は早くも19世紀の終わり頃に三菱に払い下げられ、洋館が立ち並ぶオフィス街になった。しかし現在の日比谷通りを挟んだ皇居側は特に何に使われることもなくそのまま広場として残ったらしい。東京駅から皇居に向かって伸びる通りを「行幸通り」といい、かつて天皇が神様だった頃、宮城から二重橋を経て東京駅へ向かう写真では、豪勢な車列が通ったようだ。とはいうものの、現人神の目の前も緊急時は柔軟に活用されたようで、関東大震災の被災者の為にこの広場に臨時のテント村(トタン村)が建てられて一時的に避難していた写真も残っている。
普段はこの広場、あまりにも広大で人で一杯になることは無いが、皇室関係でイベントが行われる時だけ、多くの人で埋め尽くされるのはテレビニュースで流れる通りだ。

二重橋から見る皇居の写真は東京の風景として代表的なもので、休日にこの場所に建ってみればたくさんの観光客が集まって写真を撮っているのを見る事が出来るだろう。

他の国では儀仗的な衛兵がその街の風景に溶け込んでいるのをよく見かける。有名なところではバッキンガム宮殿の近衛兵、ヴァチカンのスイス人傭兵など。何処もスラッと構えて微動だにしないその姿は、観光地の一つの風景だ。
日本では兵隊が宮殿やモニュメントを守ることはないが、皇宮警察が構えるここ二重橋・皇居正門の門衛はその類になるのかもしれない。まさにそれは他国に見える「衛兵」そのもの。軍隊的儀仗を見かけることの少ない現代の日本で、ここの門衛の立ち姿は、日本の中のある意味別世界を日常的に見せてくれる場でもある。

昨今、皇居東御苑、つまりは江戸城本丸の跡であるが、こちらを訪れる人がとても多いとニュースになった。私も東京に来るまで本丸跡に入る事が出来るとは知らなかった。入場料無料で自然も多く、都会のオアシスとして用がなくても訪れてみるのも悪くない。また、皇居の定期観光、これは事前の申し込みが必要だけれども、桔梗門から入り、宮内庁前を通って宮殿前を巡るコースは一度周ってみたい遊覧でもある。

東京は街中に案外に広大な緑が多い。これは大阪や京都に住んでいた者からすると強く感じることの一つだ。日比谷公園にしかり上野公園にしかり神宮外苑にしかり。その代表的な存在が皇居周辺。皇居前広場や東御苑だけでない。北の丸公園なども見てみれば、その意を強くするだろう。ビル街を見ずに木々を見て過ごせる場が都心にあると言えば、意外に思う方も多いだろうが、それが冒頭に書いたような外国人から見た東京の印象の一つにつながるのかもしれない。
これから暑くなる季節、都心にある広々とした空間でゆったりとした時間を過ごすのも悪くない。

皇居正門の皇宮警察

皇居正門の皇宮警察

●25系統 担当:錦糸堀車庫
西荒川~水神森~錦糸堀~東両国緑町~浅草橋〜須田町~小川町~大手町~日比谷公園前
都心と荒川を結ぶ路線で、小川町から下町へは靖国通りから両国橋を渡り、東に京葉道路を一直線に走ります。

Originally, written on May 29, 2010