第六十九話
選挙の週末〜11系統の風景

国会が休会中であれば、衆議院と参議院の院内見学として、国会議事堂の中を参観することができる。
議事堂の裏側の地下にある受付に所定の時刻までに行き、必要な手続きをすることで、個人でも係員の引率で同じ時間に手続きをした人達と一緒に主要な場を見て回れるのだ。

本会議場はテレビで見ると結構広く感じられるが、実は案外に小さく、係の人も「思ったより狭いでしょう」と話されていた。なるほど、これであれば少し声を張り上げれば議場全体に声が届きそうだ。ヤジに邪魔されなければ。

小中高生はもちろんのこと、大人の社会科見学として十分に楽しめることから、機会があれば一度訪れてみたいスポットでもある。

私自身を振り返る時、政治に比較的関心の高い家庭に生まれ育ったとは言えると思う。親は自身の政治的主義主張を押し付けることは無かったが、幼い時の記憶として横須賀に米軍の空母が入るとかの入港反対デモに連れて行かれたりしていて、両親はそれより前の時代の安保闘争とかを心情として引きずっていた。ただそれらはあくまで親自身の思想であり、子供に政治的な考えを叩き込むとかを一切しなかったのは、私の人との付き合い方にも影響を与えたと思う。
人には意外に思われるらしいのだが、今に至るまで日本にいる時は各種選挙に必ず行っていて、投票を欠かしたことがない。何となくの方向性はあっても時々の自分の立場によって投票する政党は変えているが、自分自身の信条としてそれなりの意思表示をしてきた。ただ、どんなに親しい人間に対しても政治的な考えを伝えては来なかったと思うが、そのような姿勢は恐らく親の影響である。

後年になり、アメリカ人と仕事をする際に教えられたのは、「政治と宗教は仕事に持ち込むな」ということ。特にアメリカは政治的に二項対立が激しく人種のるつぼでもあるので、社会で地位と責任を持ってそれりに活動するのならば、以上の二つには会社では触れるな、ということだった。なるほどと腑に落ちたので、以降その考えは自分の行動の基本の一つとしてやってみた。その結果、会社を超えて社外の付き合いでも実践してきたことへの私自身への評価は是非があると思うが、思想的に面白みが無いと外見上思われると共に、主義によって人付き合いを変えられることが無かったのは、自分としては幸せであったかもしれない。

明日は参議院選挙。直前に大事件が起きて社会が重苦しくなっているが、感情は見失わずに自分自身の意思を投票に託してみたい。

青空に映える国会議事堂

青空に映える国会議事堂

●11系統 担当:大久保車庫
新宿駅前~四谷見附〜半蔵門〜日比谷公園前~銀座四丁目〜勝鬨橋西詰〜月島
新宿と銀座を結ぶ基幹系統でした。現在でも四谷駅から勝鬨橋までほぼ11系統のルートをトレースする都電代替の都バス都03系統が走ります。半蔵門から隅田川の間はこれぞ東京という風景で、地下鉄に乗っていたのではこの光景は楽しめません。ただ、改正の度に本数を減らしており、使いにくいのが難点です。観光にもおすすめの系統なので、四谷から先をどこかのターミナルにつなげるなどのテコ入れを図り、何とか存続に向けた努力を期待したいところです。