第十八話
区界の橋~14系統の風景

「まあるい緑の山手線」の歌のヨドバシカメラは新宿西口駅の前だけれど、では肝心のヨドバシは何処にあるか?東京に来た頃、不思議に思って探してしまったのだが、新宿駅から青梅街道を西に向かい、成子天神前の成子坂を下った神田川を渡る所にある橋が、ヨドバシ=淀橋であった。

今の都庁が建てられる前、都庁がある一体は浄水場であった。古い航空写真を見るとこの浄水場、相当大きかったことが分かるが、この浄水場を淀橋浄水場と言った。元々東京が35区で成り立っていた頃、今の西新宿から大久保辺りを淀橋区としていたので、言ってみれば新宿の西側一体の地域が「淀橋」となる。

淀橋は、徳川家光がこの辺りの神田川が京都辺りの淀川(木津川か鴨川か桂川にあたるか)に似ていたので、その川に渡る橋だから「淀橋」としたらしいことが、橋の際にある案内に書いてある。細い神田川がどうして立派な淀川に見えたのかが不思議でならないが、他にも言い伝えがあるようなので(例えばこの神田川がよどんでいるからそちらにかかる橋として「よどばし」など)、そちらが正しいのかもしれない。

神田川という川がそうさせるのかもしれないが、青梅街道をこの淀橋を渡って中野区に入ると、東京の中心部から別の地域に出ていくような気分になる。神田川も山手線の内側であれば中心部を流れる川だが、高田馬場から小滝橋を過ぎて上流に向かって南下すると、丁度新宿から武蔵野方面への境界線のように感じるのだ。

何処の道にも「ここを過ぎれば新世界」みたいな地点があるもの。神田川は私にとっては身近な川で、私自身は中心部から見れば神田川の外側に少し外れた場所に住んでいる。そのような外側に住む私にとっても山手線外の神田川は境と感じる象徴で、東京の動脈の一つである青梅街道の新世界との分岐点は淀橋であると思う。
新宿のビル街もここまで。ここから先は住宅街としての東京がひたすら続く。本郷三丁目交差点を指した「かねやすまでは江戸の内」では無いけれど、私にとって生活圏としてのイメージがある東京もここ淀橋まで。
そこから先は、行くのに気持ちを構える東京となる。

淀橋と西新宿ビル街

淀橋と西新宿ビル街

●14系統 担当:杉並車庫
新宿駅前~中野坂上~鍋屋横丁~高円寺一丁目~杉並車庫前~阿佐ヶ谷~荻窪駅前
元は西武鉄道の路面電車として建設されました。その経緯から線路幅も異なり、他の路線とも結ばれることの無かった独立路線。

Originally, written on July 03, 2010

投稿者:

Mr.Problem

しがない制作屋です。 活動範囲:Web Producer / Director / html全般 / CSS全般 / WordPress / ガンダム / ドラクエなど..。企業内のWeb担当として活動。神奈川の海沿い生まれ。京都、大阪、神戸と流れて、今は東京在住です。