敗戦後まもなく、直宮家(秩父宮、高松宮、三笠宮)を除く皇族は皇籍離脱となった。それとともに、税金の支払いの必要もあって今まで住んでいた住居を引き払っていったことも当然の話かもしれない。
久邇宮の系統となる朝香宮は現在の白金台に居を構えていた。その住居は宮の留学時の影響もあり、アールデコ調で造られた邸宅となった。広大な庭に対し住居は大きくないが、そのモダンな建物は現代に於いても全く色あせることはない。幸いにして空襲の被害を受けず、建てられた当時のものが今でもそのまま残っている。
戦後朝香宮が出て行く際、危機感を覚えた昭和天皇が吉田茂にこの家を譲ったと言われ、それからは吉田がここを半ば首相官邸代わりにして住居とした。次いで西武鉄道がここを管理したが、建物は迎賓館として利用された。後、迎賓館として利用するのには手狭になったことから、東京都の管理に移って現在は東京都庭園美術館として公開されている。
丁度私が訪れた時は「アールデコの館」として、邸宅自体の展覧会として内部公開されており、建物をじっくり見る事ができた。今回以外でも随時美術展が開かれているようで、開催時期は邸宅に入ることが出来る。
今まで見てきた宮殿と比べればその大きさは比較できるものではないが、機能的でありながらも瀟洒な内装は、現代の目には逆に新鮮だ。
このような建築を見るたびに思うのは、どうして現代の建築家はこのような細かいところまでこだわる仕事を創造できないのだろうか、ということ。レトロとは古くさいものではなく、逆に現代に於いては新鮮さを持った建築のように感じるのは、多くの人が好んでこのような建物を見に訪れる事実が示しているようにも思う。それは決して懐古趣味からだけではないと感じるのだが、いかがだろうか。
モダンな旧朝香宮邸宅(現東京庭園美術館)
●5系統 担当:目黒車庫
目黒駅前~清正公前~一ノ橋~芝園橋~日比谷公園前~馬場先門~京橋~八丁堀~永代橋
山手から隅田川まで走る長距離路線。日比谷通りから中央区に向かうのに、銀座を通らなかったり、東京駅をかすめたり。
Originally, written on April 15, 2010