第二十話
とげぬき地蔵のかき氷~41系統の風景

都電を庚申塚で降りて南へ向かうとすぐに商店街が見えてくる。巣鴨地蔵通り商店街だ。ここはとげぬき地蔵の門前町。都心からは少し外れることになるけれど、我が家からは都電で一本で来れることもあり、たまに来ては散策をしている。

とげぬき地蔵は正確には高岩寺という。この寺を東に見た地蔵通り商店街は、少し前までは「おばあちゃんの原宿」とか言われていた。今でも歩いている人の多くは老年の方々。商店街の店も相当に老年をターゲットとした店が多く、他の場所ではあまり見られない路上CD屋(もちろん演歌や歌謡曲中心)とかパンストの先だけ取ったような靴下とか、お決まりのような「健康に効き目のある」数珠とかも売っていて、中々面白い。庚申塚の電停を降りたらすぐにこのような光景が見られるから、どげぬき地蔵までの何百メートルまでは、どうしても歩みが遅くなる。

東京に来て何カ月か経ったころ、近くの十文字学園に通っていたという人に勧められて初めてこの商店街に辿りついた。丁度縁日の日で多くの出店も出て賑わっており、それは観光ちっくな物でもなく、普通に売り子と老年各位のやり取りを楽しんだ。もちろんとげぬき地蔵のメインである境内北側の「洗い観音」にも大行列が出来ており、老いてますます盛んな善男善女に圧倒されてしまった。その時に地蔵前から乗った都バス浅草雷門行の乗客の最年少は私で、ナンとかの原宿と言うのももっともだ、と思ったのも覚えている。先日訪れた際は縁日では無かったので比較的静かであったけれど、それでも多くの人で賑わっていた。

他にもお寺は多くあろうに、ここに集まるのは何故だ?
調べてみればここの御利益は病気が治ることらしいが、来られている方々はどう見ても私より元気そう。「お参り」といったらここに集まるのが当然といういわゆる「定番」というやつか、とも思ってみたりしたが、そんな固く考えても仕方が無い。実際商店街で買い物しているだけでなく僧侶に手を合わせている方も多くいたので、信仰の場としても立ち位置を強く持っているのだろう。

今回訪れたのは暑い日で、境内のかき氷の屋台では、氷が飛ぶように売れていた。「氷」の旗が暑い風を受けてゆらめいていた。旗には「ほんものの氷 東京氷組合」の文字。まだまだこの街、奥が深そうだ。

夏の出店には氷がよく似合う。気分的には梅雨も明けて夏本番。

そしてここに来るといつも思う。

日本はまだまだ大丈夫。

とげぬき地蔵のかき氷

「こう暑いとやっぱり氷でしょ」

●41系統 担当:巣鴨車庫
志村橋~志村坂上~板橋区役所前~新庚申塚~巣鴨車庫前
都電のラストナンバー。巣鴨から北、中山道をひた走ります。最後に開通した路線ですが、昭和41年という早い時期に廃止されてしまいました。

Originally, written on July 17, 2010